Jul. 29, 2013

制作者インタビュー「関西外国語大学」

長年に渡る総合的なプロデュースで
新たなブランドイメージを構築

AID-DCC Inc.が関西外国語大学(以下、関西外大)の総合的なプロモーションツールのプロデュースを担当して、2013年で7年目を迎える。公式サイトや入学案内用のDVD、パンフレット、テレビCM、交通広告、ポスターのグラフィックを含め、全般の各メディア、PR対応などを担ってきた。これまでのプロデュースの過程に迫る。

http://www.kansaigaidai.ac.jp/

取材・文:遠藤義浩

Web用に最適化したサイト制作の成功が、関係性の継続につながる

gion_tsujiri
―2006年から続いている関西外大のプロジェクトについて、特にDVDやWeb制作に関わる話を中心に伺います。まずは、今日に至る経緯をお聞かせください。
藤原愼哉(以下 藤原):当初は海外に向けたプロモーションサイトの制作を依頼されていました。外国語大学ですので、交換留学など海外の大学との提携制度をお持ちで、一般的な大学以上に海外用のサイトが重要になります。先方はすでに紙媒体を持っていましたが、この時はそれをそのままWebに移植することなく、Webに最適化したデザインやビジュアルを新たに提案しました。クライアントの担当者にそのデザイントーンを気に入ってもらえたことで、その後のお付き合いへとつながることになりました。
最初の依頼でリニューアルを手がけた海外向けサイトの画面

最初の依頼でリニューアルを手がけた海外向けサイトの画面

―次の段階では何を依頼されたのでしょうか?
藤原:関西外大が毎年受験生のために制作している、大学案内のDVDです。制作にあたり、大学全体が抱えている状況を調べていくと、2006年当時、対象となる学生数は右肩下がりにも関わらず大学数は増えていることがわかりました。各大学が「いかに存在価値を明らかにしながら、ブランド力をあげるか」という課題を抱えていたわけです。私たちは「根本的な改善を行うならば、DVDだけでは課題解決ができない」というお話をしながら、いま使われているツールや各メディアのコンテンツ全体を変革する必要性を伝え、先方のご理解をいただきました。先方は「現状、学生数は充足しているが、5年先はわからない」という危機意識を強くお持ちだったこともあって、DVD以外のメディアも含めた全面的なコンテンツ制作に関わるようになりました。

Web以外の制作部門も活用して、エージェンシー的な機能を発揮

―具体的に、大学のプロモーションはどの時期からかけるものなのですか。
藤原:一般の受験生は、高校二年生の終わり頃から進路指導が本格化していき、高校三年生の春から各大学の資料請求をはじめます。その後、夏にオープンキャンパスで大学を見て志望校を決めていくという流れです。毎年4月をスタートとして、それぞれの時期に応じた制作物が発生するので、これらを総合的にプロデュースすることになります。例えば、夏のオープンキャンパスに向けた交通広告を用意したり、秋にかけて願書受付など入学試験へのプロモーションを行うなど、各季節にあわせた施策に対応する必要があるのです。
関西外大のプロジェクトに参画している、左から中村武志(映像ディレクター)、奥田正和(デザイナー)、藤原愼哉(プロデューサー)、北井貴之(撮影・編集)、中山健次郎(デザイナー)、南陽子(アシスタントプロデューサー)

関西外大のプロジェクトに参画している、左から中村武志(映像ディレクター)、奥田正和(デザイナー)、藤原愼哉(プロデューサー)、北井貴之(撮影・編集)、中山健次郎(デザイナー)、南陽子(アシスタントプロデューサー)

藤原:この案件は、弊社のようなプロダクションが広告代理店的な機能を担うことのできた初めてのものになりました。受験生向けの総合大学案内は他社の領域でしたが、それ以外のWebや映像、プロモーション寄りのパンフレットは弊社が担当することになりました。弊社はWeb制作会社でありながら、中村をはじめとした映像ディレクターも所属しています。Web以外の制作もできる強みがあるので、年月を重ねながら担当領域を拡大してこられたのだと思います。
中村武志(以下 中村):初年度は予算が限られた部分もありましたが、最善だと思うことは無理をしてでもやりました。一方で、極力効率的な制作も意識しました。例えば映像であれば、短期間での撮影に徹して制作費を抑えるようにしましたし、パンフレットなど紙媒体も、できるかぎり社内の人員で立ち上げの作業を行いました。社内だけで紙媒体の編集や校正作業をやってみた結果、いかに厳しくタフなことであったかを知ったため、次年度からは外部のパンフレットデザイン会社さんと組みながら、社内にも徐々に紙媒体のデザインを行える体制を作っていきました。
―社内では、どのような役割を設けながら対応したのでしょうか。
藤原:全体のメディアに関わるメインのコンセプト、ビジュアルを私が担当しながら、映像は中村を中心に外部ブレーンと組んで制作して、Webは社内のみで制作するようにしました。6年間用いているキーコピーは、クライアントサイドから起案していただきました。初期は、それぞれの制作物を中村と私の二人で動かしながら、状況にあわせて徐々にスタッフ数を増員しました。
南陽子(以下 南):私は2011年度から参加しました。藤原がプランニングの基盤を作り、私は実作業やクライアントとの直接の対応などをしています。最初は進行管理でしたが、今はアシスタントプロデューサーとして動いています。
藤原:南は、制作陣のなかで学生や撮影現場の出演者と年齢が近いこともあり、現場ではつなぎ役を担ってもらっています。出演者のみなさんは、ふだん映像に撮られ慣れていない方々ですので、緊張をほぐしたり、出演者の負担を少しでも軽減できる裏方に徹する存在が不可欠なのです。また、出演者のなかに海外からの留学生も多いため、英語力も活かしてもらうようにしています。

目指すは「一人ひとりの学生生活が伝わる」コンテンツ作り

―DVDではどういった世界観、メッセージを伝えようとしたのですか?
藤原:当時の関西外大は、関西圏の認知は高かったのですが、航空会社の客室乗務員をたくさん輩出していたため、やや派手な印象が先行していました。クライアントの要望は、在籍する多くの学生の活躍、そして強みである国内最大クラスの留学生派遣数や海外提携校とのつながりなどをしっかりと伝えること、「関西外大」と聞いて浮かんでくるイメージの優先順位を変えていくことでした。
中村:大学構内の説明ではなくて学生一人ひとりのキャンパスライフが浮かび上がるコンテンツを目指しました。仮にキャンパスが映らずとも学生を呼び込めるような映像作り、関西外大の「学生自身の魅力」が伝わる映像作りに徹しました。そこで初年度から、在校生のみなさんに出演してもらうようにしたわけです。
DVDの映像は、学生一人ひとりがどういったキャンパスライフを過ごしているのかを、想像しやすいよう心がけながら制作している

DVDの映像は、学生一人ひとりがどういったキャンパスライフを過ごしているのかを、想像しやすいよう心がけながら制作している

藤原:従来の先入観をくつがえしたいけれど、実像と異なる過度な演出を入れるべきではない。そこで、学生のみなさんたち自身が出演する「ドキュメンタリー」を軸にすることで、受験生の心に訴求できると考えたわけです。
―リニューアル後のDVD映像を観ていると、「入学後に、かなり勉強しないといけない」という印象を持ちました。学問に励みたい意欲的な学生にとっては、心が惹かれる要素ですよね。
藤原:関西圏以外の地方出身の受験生にも志望校にしてもらえるために、今も意識している方向性です。このテイストを継続できている要因には、年々関西外大の受験生が上昇傾向にあるという結果の後押しもあります。それに、世のなかの雰囲気として外国語、英語の必要性が増していることも追い風です。2013年度の入学試験志願者数が前年度対比で約20%増えるなど、時代状況ともマッチして、大学のイメージ改革の成果につながっています。

生身の学生像が伝われば、興味を持ってもらえるはず

―先ほど、ふだん撮影に慣れていない出演者への配慮について触れていただきました。映像制作のうえで具体的に注意した点は何でしょうか。
藤原:出演する学生には、普段から着ている服装を着てもらうようにしました。学生の日常生活のワンシーンを見せる目的があるので、過度な演出色を出さないことを心がけました。
中村:ご協力いただいた学生のみなさんは、それぞれに優秀な方々ですので、実際に大学で専攻している外国語でスピーチするパートも映像に挿入するようにしました。ただし、いわゆるスーパーマンのような描き方にならない映像作りにも腐心しました。フラットにならないストーリー性とエモーショナルに訴えかけられる要素を交えた構成に仕上げています。
南:プロフェッショナルなモデルではなく、一般の学生のみなさんが出演するので、撮影当日に本人らしさを引き出してもらえる準備を怠らないようにしました。事前のメールを通じて学生の気持ちをほぐしたり、本音を言いやすい環境作りを心がけています。本番の現場で緊張しすぎず、撮影を楽しんでもらえることを重視しています。
中村:加えて、学生に自信を持ってもらえる雰囲気作りも重視しました。例えば表情にしても、撮影慣れしていない学生のみなさんはカメラの前だと無意識に目が泳ぎがちです。自信をつかんでもらえると、目に力が入り歩く姿も変わっていきます。振る舞いが堂々となって、締まった映像が撮影できるのです。
―DVDに限らず、毎年掲げているテーマやタグラインが存在しますね。どのように決めてきたのですか。
撮影の様子

撮影の様子

藤原:初年度から続いているブレない軸は、「ドキュメンタリー」であり「出演した学生の能力や活躍が伝わる表現をすること」です。積極的な、意識の高い高校生は、すでに高校一年生の頃から資料請求をします。高校三年生までに都合三回するので、毎年まったく同じテーマやテイストで用意すると飽きられてしまいます。毎年テーマを変える理由には、そうした背景もあるので、トーン&マナーや目的を守りながら、それらがより深化していくテーマにしています。
中村:関西外大のタグラインとして、毎年継続して用いている文言が「Go For it」です。この「Go For it」の“it”、彼女にとって、彼にとっての“it”が何であるかを掘り下げることで、出演者のみなさんへの内面訴求に徹しています。DVDについては、映像だけで情報のすべてを伝えようとせず、DVDをきっかけに関西外大に興味を持ち、もっと詳しく知りたくなった方がパンレットなど、他の資料をご覧いただく導線を意識しています。

初年度から心がけた、情報量を制御したサイト設計

―Webサイトについてはいかがでしょうか。
藤原:検索ワード連動広告やバナー広告出稿などはしていませんが、SEO対策として実装面でできることはきちんと行っています。例えば「外国語大学」「外大」などのワードで検索されれば、しっかりとヒットするように基本を作り込んでいます。
―プロジェクトに参画した当時は、大学全般のWebデザインやサイト構造はどういう状況でしたか。
藤原:総合大学はそれぞれの学部で伝えたいことがあるので、トップページがポータルサイトのように情報量が集中する傾向がありました。特に当時は、ナビゲーションや情報デザインの考え方が弱い印象を抱きました。ですから私たちは、情報量の制御には力を入れて、すっきりした見せ方にすることを心がけました。
2006年、最初に手がけた関西外国語大学サイトの画面より。ここから、さらにブラッシュアップを経て、最新の状態へと進化する

2006年、最初に手がけた関西外国語大学サイトの画面より。ここから、さらにブラッシュアップを経て、最新の状態へと進化する

藤原:リニューアル後のサイトイメージは、当時の他の大学サイトのベンチマークになっていたとも聞きました。内外から一定の成果と評価を得られた感触はあります。これも、クライアントとのパートナーシップを築きながら、ビジュアルからの作り込みや伝達したい情報内容の整理を含めて、まかせてもらえたからこそ実現できたことです。
―長期に関わってきたからこそ生み出せた効果が、数多くあったようですね。
藤原:継続して携われると素材の蓄積ができるので、次年度以降の予算の軽減につながります。例えばDVDで言えば、オープンキャンパスで使用したり、テレビCMの素材になったり、サイトのキービジュアルに直結したりと、全体の制作物の中でも存在感が大きい。だからこそ、過去の経験を踏まえて次年度の対策にも取り組みやすく、より確度の高いキャンペーンが実現しやすいのです。おかげさまで、在学生のみなさんや教職員の方々、出演学生のご家族の方にも喜んでもらえるといったインナー効果への広がりについても報告をいただいています。
―映像やグラフィックにも力を入れる御社の総合力がプラスに作用したということですか?
藤原:はい。これからは、弊社が携わってきた総合プロモーションの初年度や二年目に制作したものに触れて入学された学生のみなさんを取材する、という巡り合わせにもなっていきます。継続的な関わりだからこそ実現できた循環で、出演する学生のみなさんにも「次は自分の世代の番」という相乗的な効果が生み出せると期待しています。今後もプロジェクトを通して、優秀な人材が輩出できる基盤作りのお手伝いに結びつけたいですね。

遠藤義浩

編集者。月刊誌『Web Designing』(マイナビ)など、主にWeb関連をテーマに扱う媒体で編集を務める。

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