Jun. 27, 2013

制作者インタビュー「URBAN RESEARCH」

オンラインで真のブランドを作るためのシステム統合とプロモーション提案

2009年から、服飾ブランドとして知名度を高めるURBAN RESEARCH(以下UR)のブランド力強化プロジェクトに、AID-DCC Inc.が企画、制作、開発と全面的に参画している。プロジェクトの全体像ならびに基幹システムの統合について(Part1)と、オンラインストアやプロモーション施策について(Part2)、制作陣に話を聞いた。

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2012AW STYLE AtoZ

取材・文:遠藤義浩

Part1.実店舗とオンラインストアで扱う商品および顧客管理データを統合。新たな販売促進の突破口を開拓できたバックステージとは?

Part2.「新規顧客獲得」や「購入喚起」というゴールのために。話題づくりで仕かけた奇策?

Part1. 実店舗とオンラインストアで扱う商品および顧客管理データを統合。
新たな販売促進の突破口を開拓できたバックステージとは?

新しいアパレルブランドのあり方を提案したい

URの施策では、AID-DCC Inc.が顧客情報のシステム構築に関する企画、プロモーション全般に関する制作、開発の広範囲にわたり全面的に携わる

―URの案件は、blogをリニューアルするという依頼が発端だったと伺っています。
クライアントから直接の依頼があったそうですね。
藤原愼哉(以下 藤原): クライアントであるURさんの社内には、もともとインターネットメディアに精通した方々が数多くいらっしゃいました。最初にお問合せをいただいた2009年当時からWeb制作会社に依頼したいという意向をお持ちで、URさんの本社が大阪だというご縁もあって、直接のお仕事をさせてもらうようになりました。

今回のプロジェクトに参画した前列左から石川彩(デザイナー)、山本文(ディレクター)、黒川雄大(プロジェクトマネージャー)、藤原愼哉(アカウントプランナー)、奥田正和(デザイナー)、能宗孝信(デベロッパー)、北井貴之(撮影・編集)、小山大輝(デザイナー/デベロッパー)、中山健次郎(デザイナー)、南陽子(プロジェクトマネージャー)、谷口恭介(クリエイティブディレクター)、中村武志(映像ディレクター)、森研治(デベロッパー)、伊藤太一(デザイナー)

藤原: 当初はblogリニューアルというご依頼でしたが、URさんに限らず、これまで店舗を中心とした直接販売のアパレルブランドは、マーケティングを行う場所としての選択肢にWebを考慮していかないと将来的に売上の頭打ちが予想できてしまう状況でした。このご縁を通して、僕たちから新たに提案できることがあると感じていました。また、URさんはこの状況への動きも敏感で、すでに社内にはWeb専門の制作チームを組まれていました。そのうえで現状を打開するために外部ブレーンの力を借りたいという選択肢も持たれていて、後々の展開につながったのかと思います。
―blog以外はどういった状態だったのでしょうか。
2009年にリニューアルしたblog

2009年にリニューアルしたblog

藤原: 2009年の時点で、URさんはオンラインストアを運営していましたが、「今オンラインストアに来訪していないユーザーをどう呼び込んでいくか、そのためのブランディングとは何か」という問題意識を強くお持ちでした。コーポレートサイトやblogも活発に運用されていましたが、当時はシステムの経年劣化やオンラインストアとの連携不足という状態でした。
本来blogのリニューアルだけを考えるならば、Web制作会社ではなくて、例えばシステムに強い会社がASPをベースに開発するほうが、コストが抑えられるでしょう。URさんは、中長期的にWeb上でのブランド力向上も目指したい考えでしたので、僕たちはblogの提案もしながら、これからの約5年先について、Web上でのアパレルブランドの未来像に関するプレゼンテーションもしていきました。
それからの1年間は、URさんと意見交換の機会を持ち続けて、2010年頃から本腰を入れた深いお付き合いをするに至りました。全面的なシステム統合をプロジェクト化することが決まり、全体の取りまとめをはじめ、フロントの開発や統合後のプロモーションの展開を弊社が担当することとなり、システム全般をフューチュレックさん(http://www.futurek.com/)とパートナーを組んで体制を作り上げ、2013年に入っても継続的にプロジェクトを実行しているところです。
―貴社が提案したプロジェクトの方向性について、詳細をお聞かせください。
藤原: ブランディングということを念頭に置きながらも、僕たちと組んでもっとも結果の伴う提案は何なのか。来訪するユーザーが年々増えているという状況を共有しながら、どのようにすればサイトに新しいユーザーがアクセスして“UR”というブランドに触れ、継続してお買い物をしてくれるか。入口や接点となるデバイス、インターフェイス、商品の見せ方から運用管理のルール、システムまで、日々URさんが実店舗で改善を含めて実行されていることと同様に「オンライン上でのブランディングの底上げ」になると思われることをご提案していきました。その礎となったのが、商品管理と顧客管理システムの統合です。

実店舗とオンラインストアのデータを有機的につなげる

―なぜこれらのシステムに着目することになったのでしょうか。
藤原: 当時はURさんの実店舗で登録した顧客情報とWeb上で登録したユーザー情報が同期していませんでした。在庫管理システムについても実店舗とオンラインストアとでは、別々に各商品が管理されていました。実店舗のために作ったシステムがあった状態に、後からオンラインストアを作ったため、当時としては致し方ないのですが、もったいない状況と言えました。例えば同じ衣服でも、店舗とオンラインストアで管理コードが異なるわけです。これは他社のアパレルブランドでも多くが抱える問題だと思います。
―だからこそ、基幹システムのあり方について、実店舗とオンラインストアの双方が管理しやすく、より成長できる方向性に舵を切れるようにしたと。
藤原: 実店舗用のデータをオンラインストア上のデータと統合できれば、実店舗とオンラインストアのサービスをつなげることができます。本来クライアントにとっては、根本的なシステムの一新という勇気の必要な決断ですが、URさんサイドでも今後のマーケティングのあり方として、同じようなことを想像されていたのが大きな原動力となりました。そこで、改めてURのみなさんと僕たちとで統合に関する提案を共有していくに至りました。

こうした提案へと深めていけたのは、まずは僕たちがフロントサイドの提案をしていくなかで、裏側でデータが統合されていない限りは表面的な解決にしかならないことに気づけたからです。

もちろん、僕たちもメリットについて具体的な説得材料を持ってプレゼンテーションするように努めました。経営的な観点を考慮すれば、実店舗とオンラインストアのサービスをつなげることで、どういった将来性が期待できるのか。新規顧客数がどれほど伸びて、売上がどの程度高められるのか。データ統合で見込まれる「発生する費用に見合った効果」を明瞭に説明できなければ、当然クライアントも決断できませんからね。
―とても興味深いのは、基幹システムに関わる提案を、Web制作業務を中枢に据えるAID-DCC Inc.が行っている点です。
藤原: おそらくシステムに強い会社の場合、システム構築以外のプロモーションについては領域外だと思います。その点、弊社はシステムを整えたうえで「どういった波及効果が望めるか」「波及効果が起きた後のメディア展開や販売チャネルの拡充をどう描くか」についての提案にも注力しました。それがクライアントにとって、さらにシステム統合後の状況を想像しやすくしたと考えられます。
―どれほどの期間をかけて、システムを統合していくのでしょうか。
藤原: まずは、統合作業上の役割分担をはっきりさせることからはじめました。店舗の基幹システムを担っていた東芝テックさんには引き続きご協力いただきながら、Web側のシステムにフューチュレックさんの協力を仰ぐことにしました。そして弊社が統合におけるプロデュースを担い、店舗とWeb側のシステムが円滑に統合できる橋渡し役をさせていただきました。

以上のチームを編成して、約1年強かけて作り上げていきました。基幹システムとWebというオープンな場所をつなぐ作業になりますし、すでに大量のデータがある状態です。通常、会員システムの立ち上げはかなりの時間を要する作業ですが、もともとURさんは実店舗とオンライン双方でそれぞれの会員システムも持っていたため、運用を統合するという検証は必要ながら、会員情報をつなぎやすかった点はプラスに働きました。
―「データをつなぐ」という一言では片づけられない、越えなければならないハードルが高くそびえていたわけですね。
藤原: どうしても店舗で生じる課題とオンラインストアで生じる課題とでは内容が異なります。顧客情報に対して扱い方や解釈に温度差があるからです。例えばオンラインストアだと積極的に取り入れたいデータの使い方が、店舗側では受け入れがたかったりするなど、どうしても噛み合わないことが出てきます。システムやデータが、店舗とオンラインストアで分かれているメリットもあったんですね。そのメリットを越えた「新たなメリット」の達成が僕たちの最大の使命でした。

2010年当時から、モバイルがスマートフォンに移行する潮流は感じられていましたので、例えばデータ連動した独自アプリのリリースなどの具体策の一例も示しながら、進めていきました。根本的なシステム改訂ができた背景には、具体像の提案をできたこと(Part2で詳細を掲載)、改訂後のフロント部分がどうなるかを説明できたことで、他のアパレルブランドでも苦戦している領域に踏み込んでリニューアルにつなげられたと思います。
―ここまでデータを統合するにあたっての概要を伺ってきました。Part2では、統合過程の話と、統合後のオンラインストアの状況、2012年秋に展開されたプロモーション施策などの具体策について、話を伺います。

Part2.「新規顧客獲得」や「購入喚起」というゴールのために。話題づくりで仕かけた奇策?

遠藤義浩

編集者。月刊誌『Web Designing』(マイナビ)など、主にWeb関連をテーマに扱う媒体で編集を務める。

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